「床に石を使いたい」と言われた日のこと。
「床に石を使いたいんです」と言われた日のこと。
最初に希望を聞いたとき、「大谷石を床に使いたい」とおっしゃっていました。
大谷石、わかります。 あの独特のやわらかい質感と、なんとも言えないぬくもり。 WABIKAでも壁や外構によく使う素材で、私も好きです。

ただ、床となると少し話が違ってきて。
大谷石は時間が経つと、表面の「ミソ」と呼ばれる部分が崩れてきます。 角が立って、素足で歩くと擦れたり、場合によっては切れてしまうことも。
「素足で気持ちよく歩きたい」という希望をいただいていたので、正直にお伝えしました。
「大谷石の雰囲気は絶対に活かしたい。でも床だけ、別の石にしませんか」と。
そこから一緒に探して辿り着いたのが、十和田石でした。

秋田県の石で、触るとひんやりしているけど冷たくない。 細かい粒子のざらっとした質感が、素足に心地よくて。
窓から光が差し込む時間は、表面がうっすら輝いて見える。 曇りの日は落ち着いたグレーに戻る。 同じ石なのに、毎日少し違う顔をしています。
無垢フローリングとの切り替えラインを踏むたびに、「ここから違う」と感じる瞬間があります。 壁も段差もないのに、空気が変わる。
完成した空間を一緒に歩いたとき、お施主様が静かに喜んでくれた顔が、今でも記憶に残っています。
希望をそのまま叶えることが、いい提案とは限らない。 でも希望の「奥にあるもの」を一緒に考えれば、もっといい答えが見つかることがある。
そう思いながら、毎回打ち合わせをしています。
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